押しかけ社員になります!

不安は払拭された。…でも、お見合いしたんだ。どんなお相手の方だったのだろう。
綺麗で、きっとどこかのご令嬢よね。会うだけって…。私が居たから?…居なかったら?
部長の出世に差し障りは無いのかしら。

「…西野。聞けと言っただろ?」

ゔっ。

「は、い…お見合いは、会うだけで良かったのですか?本当は部長にとって、重要なお相手だったのでは…」

「西野、何が重要な事だと思う。出世か?相手を利用した地位か?確かに…それに近い、そんな話が元の見合いだ」

…やっぱり。

「だけど初めから常務に断っておいたよ。良い返事はしませんけど、それでもお見合いはした方がいいですかって。
常務は俺をよく解っている。それで構わないと言うから形式だけの見合いをした。
心配無い。即、断っているから。大丈夫だ。俺は会社のために相手は選ばない。よく覚えておいて欲しい。
こんな話は今後、俺が独身の間は無い話じゃないんだ。断っても、ずっと持って来られてしまう。
西野。だから、その度お前は不安になるかも知れない。だけど俺は、生涯を共にするのは、西野以外、有り得ないから。よく覚えておいてくれ。何度も言わない。言わなくても解ってくれていると信じている。
後にも先にも、この先ずっと西野だけだ。西野の事、信じている。俺の事も信じて欲しい」

部、長…。わたくし、西野和夏。こんな嬉しいお言葉はありません。よく肝に命じておきます。完全な安堵、頂きました。

「納得したようだな」

「はい」

「…西野こそ。…加藤とじゃれるんじゃないぞ」

えっ?加藤?同期の?ナイナイ。有り得ませんよ?

「そんな…加藤はただの同期です。そんな…じゃれてなんか無いですから。無人島で二人になっても、何も無い自信があります」

「それは解らないな。男と女だから。西野が無くても、男は雄だ。…絶対、無人島には行くなよ」
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