押しかけ社員になります!

「…西野がいい」

あ。

「部長…」

「食後のデザート、頂かせてくれ…西野」

…あ。抱き上げられていた。せっかく珈琲入れたのに…。どうするのよ、部長…。
そりゃあ、空気は読みますけど?

「…西野。俺と珈琲、どっちだ」

…ハハハッ。簡単に心、読まれてた。でも、女は現実主義。そして、甘い物は本当の甘い物が、私が、食べたくなった。

「珈琲。それに、甘い物もあった方がいいです。私やっぱりコンビニに行って来ます。食べたくなったから仕方ありません。では」

暴れるように下りて、エプロンを解くとお財布を握った。

「おい…西野、…」

「部長が言うからですよ?だから食べたくなったんです。行って来ます」

…。

はぁ、西野、本当にお前という奴は…、ふぅ、飽きさせないな。フッ…面白過ぎるだろ。

「あ~、待て待て、俺も行く」

危ないからな。

「じゃあ、ついて来てください」

俺はお供の犬か?猿か?まあ、いい。お供しますよ。このサンダル借りるぞ。


「いらっしゃいませ、こんばんは…あ」

「…こんばんは」

お、あのお兄ちゃんじゃないか。その反応、彼女っすかって顔だな。
ああ、そうだよって顔してやるか…。

ハハハッ。

ハハハ。

…伝わったな、笑ってるし。


パッパと欲しい物を入れ、西野がかごをレジに置いた。商品は少ない。あっという間に会計は終わった。

「有難うございました。彼氏さんですか?」

「え?ち、違います。違いますから。あ、有難うございました」

「あ、おい」

「違うって。…俺、今の人、タイプなんですけど。前からちょくちょく見掛けてて」

おいおい、聞き捨てならないな。あ、おい、西野、待て…。

「はあ?君、彼女居るんだろ?」

「まあ、居ますけど」

「だったら…」

「それとは別です。タイプはタイプって話です」

取るんじゃないぞ。放っといてくれ。君みたいな若くて…イケメン君は、歳相応を相手にしなさい。

「俺のパンツ買ってたらしいぞ、ここで」

「マジっすかっ!」

…マジだよ。俺の彼女なの。さっきは照れただけなんだよ。

「俺じゃない時なんだ…。あ、早く追い掛けた方がいいっすよ。女性の…綺麗な人の一人歩きは危険ですよ?」

「あ、ああ。あ、手、出すなよ。絶対」

「有難うございましたぁ」

…。あいつ…、今度来たら、シめとくか…。
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