押しかけ社員になります!
ガツッ。ゲッ、なんだ?鍵、掛かってるじゃないか…。…西野~。
仕方ない。
ピンポン。…。ピンポン。…。
ん?…どうした。あ~、…もう。
RRRR…。
「もし…」
『留守番電話サービスに…』はぁ、西野…。どうした…。
カ、チャ。
「お、西野…、どうした」
「…」
一体どうしたんだ。
「西野?…」
「…ごめんなさい、部長…」
「何がだ?」
「…違うなんて言って。走って帰って、ごめんなさい」
あぁ、…そんな事か。
「…馬鹿だな。そんな事、気にしたのか?気にする事か?何でもないじゃないか」
「でも…思いっ切り否定してしまって。部長に恥を…迷惑を…ごめんなさい」
「いいんだ。あんな風に言われたから恥ずかしかっただけだろ?」
「…はい」
手を引いてそっと抱きしめた。…ふぅ。
「…西野?気をつけろよ?」
「はい?」
背中を撫でた。
「あのお兄ちゃん、西野の事、タイプだってさ」
「…えー、そんな事…」
一瞬西野が身体を離したが、肩に顎を乗せて甘えるようにして抱きしめた。
「…ムカつくよなぁ、俺にいけしゃあしゃあと。言うか?まあ、彼女は居るみたいだから、危ない事は無いだろうけど。普通に買い物する分には心配無いだろ。
さっきは、からかわれたんだよ。あの店員、俺と前に、ちょっと話をした子だったから。
だから、わざと聞かれたんだよ。元はと言えば俺が悪いんだ。西野?アイス溶けるぞ?
今食べないなら冷凍室に入れとくぞ?」
「あ、はい。…すみません。有難うございます」
背中をトントンして離れた。ん…。
「西野、今夜は帰るよ。もう、こんな…深い時間だ。早く寝なさい。…明日は会社がある」
あ…部長…。帰っちゃうんだ…。
「え…は、い」
「今夜の事は本当に気にするなよ?金曜、俺の部屋に来れるか?俺が来ても構わないが…」
「…はい。行けます」
「じゃあ、週末ゆっくりしよう。…土曜も日曜も、帰さないぞ。いいな?」
「え…」
「そういう事だ。じゃあ、着替えて帰るよ。今夜はネクタイは許してくれ。いいか?」
「はい」
気にかけてくれて、優しい。
…。