押しかけ社員になります!
「読んだよ」
あ、もう読んでくれたんだ。
「…有り難う、ございます」
「…どういう事だ」
キタ…。キマシタ。不謹慎ですが…、久し振りに聞く、この冷たく突き放すような口調。
部長と私は会議室に居た。ここも久し振りだ。
「聞いてるのか?」
あ、回想してる場合じゃ無かった。
「あ、はい。聞いてます」
「それで、西野はどうしたいんだ」
…ですよね。こんな、今更言う事では無い事を言うなんて…。だったら初めから、好きだ好きだと、掻き乱すんじゃないって。
「俺が部長だから?いつかは取締役になるから?だから私でいいんでしょうか?…何だこれは」
パンッと手にしていたファイルをテーブルに置いた。
…。
「俺が部長なんて知らなかった訳でもあるまいし。何か?この先を考えたら、益々俺とは嫌になった、そういう事なのか。そういう事だな?」
部長…。珍しい。こんなに内容に触れて、会社で話をした事なんて無かった。いつも肝心な事には触れなかったのに。これは、急を要すると、判断してくれたのだろうか。
「西野…。西野は肩書きに惚れた訳じゃないだろ?俺と言う…青柳吉城という一人の男に惚れてくれたんだよな?」
「はい」
確かに。単純にそうです。真っ直ぐ部長を見ていた。
「それで確か、この先もずっと、俺以外好きになる奴はいないって言ったよな?」
「はい」
顔を見て、目を見ていた。
「だったら何だ。何を今更、こんな…怖じ気づく。無鉄砲に俺に向かって来ていたのは何だ?…俺をからかったのか?やはり戯れだったのか?」
「違います。断じて違います。最初からずっと真剣です」
「だったら…何も…心配する事なんか何も無い。…部長である俺が嫌なら、辞めてもいいぞ」