恋愛急行
遠くから想うこと
次の日、菜穂はいつもの電車に乗って来なかった。
気まずいのも無理はないと、私も深呼吸をして、いつもの車両のいつもの場所に1人で立った。
学校へ着き教室へ入ると、菜穂はすでに登校していた。
そして私が席に着こうとすると
「綾〜!おはよ〜!」
といつも以上の笑顔で手を振ってくる。
その左手には大きなリストバンド。
まるで見せつけて睨むかのような目は、私にだけわかるものだった。
そして
「友里たちがみんなAコースに行くんだって。だから私もAコース行くことにしたんだっ。綾はBコースだよね?離れちゃうなんで残念だなー。」
菜穂はわざわざAコースに進むメンバーで顔を寄せて笑った。
期待通りに応えなかった私に復讐でもしようとしているのか、あまりにそれはわかりやすかった。
菜穂を嫌いになった訳ではないし、あえて避けた訳ではないけれど、クラス替えをすると自然と友情も消滅した感じとなり、それ以来同じ電車で通学することもなかった。
それでもお揃いのマフラーを巻いて二人乗りした自転車はいい思い出で、離れて冷静になってから菜穂に感じていた恐怖が消え、菜穂の抱く孤独と闇への心配に変わったことは、今となっては伝える術もない。
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

愛する我が子へ

総文字数/53,528

ノンフィクション・実話71ページ

表紙を見る
小さな息子へ

総文字数/18,842

実用・エッセイ(その他)25ページ

表紙を見る
言い訳の旅

総文字数/1,718

実用・エッセイ(その他)1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop