好きって言ったら信じてくれる?
「亜紀、早くいかないと次実験だよ?」
そわそわした莉央に声をかけられてほっとしながら「うん」と答えて歩き出す。
その瞬間、「水野」と呼ぶ低い声が聞こえて振り返ると思いのほかに先輩が近い。
「僕のこと、意識しすぎ。」
意地悪な笑みと共に耳元で囁かれた。
その言葉もやはり図星で、振りきるように速歩きで道を急いだ。
「大丈夫?亜紀顔赤いよ?なにか言われた?」
この熱い頬見られたくないから。
「なんでも、ない。」
「そっか。」
莉央は、それ以上なにも聞かなかった。
「それより、今日は実験なにするんだろうね。」
「なんか、いってた気がするけど、忘れちゃったぁ。」
無理やり、話題を変えていつも通りの意味のない会話に安心する。
私、どうかしてる。
先輩に会うたびに動揺しそうで、これじゃ何だか思う壺。
言うまでもないけれど、実験には全く身が入らなかった。