好きって言ったら信じてくれる?
「あのさ、水野。」
嫌な予感はしていた。名前を呼ばれた瞬間から。
いや、廊下で呼び止められてこの空き教室に誘われた瞬間からか。
「好きっていったら信じてくれる?」
「無理です。」
「即答!?」
この人に関わるとろくなことがない。
今までの経験上、すぐに立ち去るべきだと言うことは分かる。
無言で脇を通り抜けようとしたら肩をがっつり掴まれてしまった。
体を正面に向けられて、整った顔が近づいてくる。
「ちょっとは、迷うとか戸惑うとかしてくれてもよくない?」
覗き込むようにしてそう言ったこの人は私の中での要注意人物。
「立花先輩、近いです。」
先輩をじろりと見上げる。
「ほんと、つれない水野。」
諦めたのか、やれやれと首を振ると一歩さがって道を開けた。