好きって言ったら信じてくれる?






「ねぇ、亜紀知ってる?この映画今日公開だって!」



昼休み、お弁当を食べたあとに莉央がそう言って見せてきたのは、日曜日先輩と行くと約束した映画。



「あー、うん。知ってる。」



「あれ、もっと騒ぐかと思ってた。前に観たいって言ってたよね?」



「うん、でも、日曜日に観に行くことになったの。」




“先輩と一緒に”ということは何となく言い出しにくくて目をそらす。



そんな私の心の機微も、目ざとく莉央は感じ取って、しつこく尋ねてくる。




「そうなんだ。で、誰と? ねぇ、誰といくの?」




「…先輩。」



抵抗を諦めてポツリと答えた。



「え、立花先輩?」



コクンと頷くと、莉央の目が輝く。




「わーお、遂に?先輩とデートかぁ。っていうか、いつの間にくっついたの?」




「え?先輩と? 違う違うデートじゃないし、付き合ってもないよ。」



「え、でも、映画二人で行くんじゃないの?」



莉央の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えそうだ。



「そうだけど。」



「じゃあ、デートじゃん。」



「いや、そうじゃないんだよ。先輩も一人で見に行こうとしてたみたいで『どうせなら一緒にいく?』って感じなの。」



「ふーん。亜紀がそう思ってるならそれでいいけど…。でも、実質としては映画デートだよね?」


何だかひっかかる言い方だけれど勢いに押されてとりあえず頷いた。


「じゃあ、チャンスだよ。先輩との距離を縮めるのに。何着ていくか決めた?髪型は?アクセサリーとか。」




言われて初めて気が付いた。



そっか、先輩と私服で会うのか。







< 30 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop