好きって言ったら信じてくれる?
駅についたあと、真っ先に映画館にやって来た。
「ちょっと待ってて。」
先輩にそう言われて、素直に待っていると戻ってきた先輩に「はい。」とチケットを差し出された。
「あ、ありがとうございます。」
と慌てて受けとる。
「いくらですか?払います!」
先輩は、笑って答えてくれない。
「でも、」と粘ると先輩も頑なに首を振る。
「僕が誘ったんだし。」
「それに、」と付け足された一言と笑顔。
「可愛い後輩にちょっとは格好つけさせてよ。」
あぁ。そっか。
その言葉が胸にストンと落ちた。
私は“後輩”か。
「しょうがないですね。」
この胸の痛みには気づかないふりをして、笑顔で先輩を見上げる。
多分、ちゃんと笑えてる。
「今日は奢られてあげます。でも、絶対、いつか奢り返しますから。」
「いやいや、それじゃ意味ないじゃん。後輩におごらせる訳にはいかないし。」
本気でちょっと慌ててる先輩が可笑しくてちょっとふざけてみる。
「えー、じゃあ何かプレゼントしますよ。参考書とか?」
「何で、そこ参考書なの?確かに来年は受験生だけどさ。どうせ、水野にもらうならお菓子とかがいい。」
「お菓子折りですか?」
「いや、そこは手作りでしょ。バレンタインデーとか。」
「…考えておきます。」
ほんと、私ってバカ。
先輩にとって、私は“後輩”でしかない。
嫌というほど感じてる。
だから、想いに蓋をしようとか、すっぱり諦めようと思ってたのに。
先輩と話す時間が好き。
この心地よさを手放したくないだなんて思ってる。
時計をちらりと見て先輩が言った。
「さて、とりあえず今日ポップコーンは食べる?」