好きって言ったら信じてくれる?
ブランコに座る私と向き合って細い囲いに腰かける先輩。
「公園に来たの久しぶりだ。」
「私もです。」
「なんか、飲むものでも買ってくればよかったね。喉乾いちゃった。」
先輩はそう言うけれど立つ気配はない。
飲み物を買おうと思えばすぐそこに自動販売機があるのに。
「そうですね。」
また、少し沈黙。
「先輩の家ってここから何分くらいかかるんですか?」
今度は私から話始めた。
「近いよ。5分かからないし。この公園も小さい頃はよく来たし。」
「そうなんですか。」
小さい頃の先輩、みてみたい。
きっとかわいい。
「水野って、逆方面なんだっけ?あ、ごめんね家から遠ざかっちゃった。」
慌てる先輩ににっこり笑う。
「大丈夫です。まだ明るいですし。」
「そうだね。でもそろそろ暗くなるのが早くなってきたし。」
たしかに。10月に入って一気に肌寒くなり少しずつ冬の訪れを感じる。
「あ、そんなこと言いながら水野を外に引き留めちゃってちゃ駄目だね。」
「いいんです。」
先輩が不思議そうな顔をする。
「よかったんです。」
今、別れてしまうほうが寂しかったから。
何だか、無性に言いたくなった。自分の想いを伝えたいような。
このまま、宙ぶらりんの後輩のままじゃいやだから。
「先輩、」
私が呼ぶと先輩は答える。
「何、水野?」
その目を見つめるとやっぱり言えなくて目をそらす。
「なんでも、ないです。」