好きって言ったら信じてくれる?


階段を覗き混んでみると、莉央は「あ、おはようございます。」とペコリとしているところだった。そのあと、また凄い勢いで階段を下って行く。



私も、教室に戻ろうかと、立ち上がって階段の段に足をかける。



そしてそのままフリーズする。



「おはよう、水野。」



にっこり笑った先輩が階段の下で手すりに持たれるように立っていた。



さっき見下ろしたときには死角だったらしい。

莉央が挨拶した相手は見えなかった。




「おはよう、ござい、ます。」


訝しげな声だったと思う。先輩はクスリと笑う。


「顔、もう赤くないね。残念。」



「な、聞いてたんですか?」



先輩は頷く。



「でも、誤解しないで。わざとじゃないから。」


「じゃあ、何で。」


「言ったことなかったっけ?屋上前のスペース人が来なくて気に入ってるって。朝早くきたときは、よく1人で本を読んでる。」


先輩は、持っていた本を振ってみせる。



「そうなんですか。」



たしかに、人が来なくて気に入ってるとは言ってたけど、朝にここで本を読んでるなんて聞いてない。



「今日は階段上ってたら水野の声が聞こえて、そのまま声をかけようとしたんだけど、僕のこと話してる気がして、声かけ損ねたわけ。」


その通り先輩のことを話していた。だからこそ、どこからどこまで聞かれていたのか考えるだけで恥ずかしい。



「でも、朝から亜紀に会えるなんて。来てよかった。」


急にその声と笑顔が甘さを含み、昨日の先輩を思い出させる。










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