レモンとソーダと甘味料



「僕はこの日の朝、確かに君に声をかけましたよ。
 そうだな、確か僕は急いでいて、君とぶつかったんじゃなかったかな」
「それでは、101回ということになるだけですわ」

男はにっこりと満足そうに微笑んだ。

「こんなこともありました。
 君が落としたハンカチを僕が拾ってあげたのです」
「それでは、102回ということになるんですのね」
「それも違うと思いますよ。
 なぜなら僕は、君に初めて声をかけた日から今日まで 一日一回は必ず君と言葉を交わしているからです」


少女の手帳には丸が並んでいない日がいくつかあった。

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