つながる
静かな山の中で竹刀を振る。
風を切る音が好きだった。
「りょー!」
「はいよー」
ラスト10本振って幸太郎の小屋に戻る。
いつも城下へ行く時に背負う籠に
薬の入った包み紙を大きな紙に包んで
入れている幸太郎。
「こーちゃん、ただいまー」
「おー、おかえりー」
最近はこーちゃんって呼んでも怒らなくなった。
進歩進歩。
「お前がしつこく呼ぶからな。」
「最近つい口に出るなぁ。で?何の用?」
「今日はお前にもついていって
食材買ってきてもらおうと思ってなぁ。」
「食材ー?」
「おーよ、お前の食いたいもんも買っていいぞ」
ぽーんっとまた飛んでくる塊。
「今日は袴きてけ。街でそんのふっとい足
なんか出したらひんしゅく買うからな。」
「はいはい。太いのは知ってますよー。
にしても、幸太郎袴なんか持ってたんだな〜」
広げてみると濃い灰色の袴。
「まぁ、若い頃になぁー。」