振り向いたらあなたが~マクレーン家の結婚~
それから数日して、コスナー氏は仕事でロンドンに戻った。マリアンヌは1か月後、ロンドンのセント・アンドリュース教会で式を挙げることになった。
姉妹たちは結婚式の準備で大騒ぎだった。
マリアンヌはマクレーン家で初めての花嫁だった。
そのため姉妹たちの夢と憧れがいっぱい詰まったものになった。
ウェディングドレスは、マリアンヌからの希望で、母親の物をマリアンヌの体型に合わせて、手直ししたものを着ることになった。
少し古いタイプなので、今風にするために姉妹たちは布を継ぎ合わせたり、レースをつけたり、逆にはぎとったりした。
また、自分たちが結婚式で着るものも作り直した。
そのため、毎日遅くまで姉妹たちは針を動かしている始末だった。他には、花の手配をしたり、参列者をリストアップし、招待状を書いたり、身に付ける装飾品の手配もしなければならなかった。マリアンヌ達はクタクタだったが、心から充実していた。

マリアンヌは結婚式のためにロンドンに来てから、コスナー氏に招待されて、彼の母親と会う事になった。彼の母は、まだ40代で美しく気品のある女性だった。マリアンヌと彼の母は、すぐに親しくなった。
そして、彼が実は英国王の非嫡子の息子だという事を知って、マリアンヌは驚きのあまり口も効けなくなった。そして、彼の弟は、皇太子ジョージ6世だった。
だから、あの舞踏会にいたんだわとマリアンヌは納得した。そして彼の母は、ジョージ5世の愛人だった。
それを聞き、マリアンヌは何となく彼が結婚したがらなかった理由が分かった気がした。コスナー氏にそのような王族の血が流れていることは、分かるようでも分からないでもなかった。
コスナー氏は確かに目が覚める程ハンサムだが、大切に守られてきたわけではないからもっと粗削りで、庶民的でもあった。
それに、コスナー氏はマリアンヌがその事実を知ったと知っても、特に何の変化もしなかった。どうやら、その事実を気に入っていないようだった。そして、さらに驚いたことに、あれからマリアンヌはもう一度別の本屋へ行って手に入れたマーガレット女史の『女性が幸せになるために』は、彼の母が偽名を使って描いたものだと知ったことだ。
あれから幾度となくその本を読んで、マリアンヌは自分の人生や女性としての生き方を考えてきた。
とてもマリアンヌの内面に影響を与えた示唆に富む本だったが、それをコスナー氏のお母さまが書いていたとは。話に聞くと、コスナー氏の母上は、国王の愛人と言う難しい立場になって悩みの多い日を過ごしていくうちに、どうすれば悩みが消えていくか悟って、この本を書いたらしい。
そして、女性はもっと強く生きていけると確信したらしい。マリアンヌは感銘を受けた本の著者と出会えて、とても嬉しかった。これからは機会を見つけて会うことをお互い約束した。
マリアンヌはこんな素晴らしい人に出会わせてくれたコスナー氏に感謝した。
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