その背中、抱きしめて 【上】
電車の中、長椅子に座ると色んな方向から視線を感じる。
実際には私が視線を向けられてるんじゃなくて、全部高遠くんに向けられた女性からの視線。
学校でも大人気だけど、学校から出ても凄まじい視線。
(毎日こんな視線を浴びながら生活してるんだなぁ)
高遠くんをチラチラ見てみる。
慣れっこなのかな、全然気にも留めてない様子。
「何?」
怪訝そうに見下ろされた。
「さっきからすっごい女子の視線集めてるなぁって思って。いっつもこんな感じなの?芸能人みたいだね」
周りに聞こえないように小声で話す。
高遠くんは聞き取りにくいのか、正面を向いたまま、耳が私の顔に近づくように横に頭を傾けた。
「先輩も優越感に浸れるでしょ。そんな俺の彼女なんだから」
私の方に視線を向けて、からかうように少し口角を上げた顔にドキッとした。
自分がモテてるのわかってるな、こやつめ。。。
私の手に自分の手を絡めて、そのまま高遠くんの膝の上に置く。
私が顔真っ赤になるのと、周りの女性が目と口をあんぐり開けるのを見て、高遠くんはククッと笑った。
これは小悪魔だ。
天性の小悪魔がここにいる。