その背中、抱きしめて 【上】



「わぁ、やっぱり広そうだね」

入園券を買った時にもらった園内マップを見ながら歩く。



最初に見えたのはインドゾウ。

「ゾウさん!!おっきい!かわいい!」

久しぶりの大きい動物に私もテンションが上がる。


「えぇ?ゾウってかわいい?」

「可愛いじゃん!目が可愛い。鼻も可愛いし、口も可愛い」


女子には『可愛いフィルター』があって何でも可愛く見えちゃうもんだけど、動物はフィルター無しでも絶対可愛い!!

男子にはこの感覚わかんないのかなぁ。

どこからどう見たってかわいいのになぁ。


「でもインドゾウって暴れ出すと人間踏み殺すぐらい凶暴なんですよ」

意地悪そうに笑う。

この顔も普段見ない顔。

他人に興味がない高遠くんは、人に意地悪もしないから。


「暴れてるゾウさんに近づく人間が悪いんじゃん。動物のテリトリーに人間が入って行ったりとかさ、動物のテリトリーに人間が街を作ったことで、街に動物が入ってきちゃったとかさ。人間が悪いんだよ」

高遠くんの現実的な話に、ついムキになる。

それをあやすように、高遠くんが優しい顔を私に向けた。


「先輩はほんとに純粋ですね。そこがほんとに可愛い」


また私の顔から湯気が出る。

恥ずかしいセリフを普通に出してくる高遠くんに、私がついていけない。



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