その背中、抱きしめて 【上】
「ご、ごめ…」
引きつり笑いで何とかその場を取り繕おうとしたけど、効果ナシ!
冷たい目で私を一瞥して、スタスタ先に歩いて行っちゃった。
どうしよう、怒らせた?
「高遠くん、高遠くんごめんっ」
追いかけて両手で高遠くんの左腕を掴む。
そのままぎゅっと左腕にしがみついた。
「先輩、それ可愛いからヤメテ」
へ?
「しかも胸、当たってます」
えええええええ!!!?
バッと離れる。
恥ずかしい恥ずかしい!!
私ってば何やってんの!!!
「??…先輩、泣いてるの?」
あ…。
視界がゆがんでる。
高遠くんの顔もゆがんで見える。
知らぬ間に涙が出てきてた?
「ごめん。ごめんなさい。やりすぎました」
そう言って私の頭は高遠くんの胸に押し付けられた。
後頭部に感じる手の大きさと温かさ。
「私こそ動物に夢中でごめんね」
高遠くんの背中に両腕を回して、ぎゅっと抱きしめた。