その背中、抱きしめて 【上】



次のサバンナゾーンはバスで回るコース。

広大な敷地の中、肉食動物と草食動物とに分かれていて、野生のように放し飼いになっている中をバスで巡る人気の目玉ゾーン。


バスの中、私を窓側の席にしてくれた。

デートに慣れてない私としては、こういう気遣いとか嬉しい。

なんか”彼女”って感じがする!

世の中の彼氏持ちの女子は、こんな嬉しいことが日常的に起こってるのね。



キリンやシマウマ、ヌーとかも草を食べたり水浴びしたり。

まだ気温が上がりきらない午前中、動物たちは思い思いに動いてる。

そのまま肉食獣エリアへ。


トラ、ヒョウ、チーター、そしてライオン。

あまりの迫力とカッコよさに窓にかじりついて目がランランと輝く。



「ぶっ…」

はい?

「子供みてぇ…」


高遠くんが笑いをこらえてる。

「小さい子供と動物園に来た若いお父さんってこんな心境なのかな」

笑いをこらえながら高遠くんが呟く。


「ホラ柚香ー。ライオンさんおっきいねー…ぶはっ」


ついに高遠くんが吹き出した。

声を殺しながら肩を震わせて笑ってる。


「もうだめ、苦しい。死ぬ」


ちょっと、何なのこの馬鹿にされてる感じ。

でも高遠くんがこんなに笑ってるの滅多に見れないから、まぁいいか。


「ねぇパパー。ライオンしゃんおっきいーーーーーー♪」

子供の真似をしてみる。


「ヤメテ!!!マジ無理。笑いすぎて死ぬ!」


ツボに入った高遠くんの笑いが収まるのはもうしばらく先のこと(笑)



< 176 / 503 >

この作品をシェア

pagetop