その背中、抱きしめて 【上】



「はぁ…。腹痛い。先輩もうほんとに何なの」

涙目の高遠くんは若干疲れ気味。

一方、さっきから私はニヤニヤが止まらない。


「何笑ってんスか」

「いや、だってこんなに笑ってる高遠くん見たの初めてだしさ。普通に笑うんだーって思って」

”そりゃ普通に笑いますよ”って、今度はちょっとふてくされ顔になった。


「あ、すっごいいいにおい。そろそろお昼にしよーよ」


いいにおいが漂ってくるレストラン前にある時計は12時少し前を指している。

「そうしましょうか。笑いすぎて腹減ったし」


お昼近くでレストランはだいぶ混んできてたけど、待たずに席に通された。

私はパスタ、高遠くんはハンバーグのセットをそれぞれオーダー。


「はぁ。午前中まだ2時間くらいだけど、すっごい楽しい!」

水を一口飲んで、私は午前中の正直な感想を漏らした。


「あ、でも高遠くんのこと全然考えないで動物園にしちゃってごめんね。私1人で楽しくて騒いじゃってるし。遊園地とかの方が楽しめたかな?」


高遠くんは片ひじをテーブルに付いて顎を乗せた姿勢で、少し意地悪そうに微笑んだ。

「いいえ。俺も楽しいです。特に先輩の子供みたいなはしゃぎっぷりが」


言ってくれるね、この子。

「パパぁ、ご飯食べたら次どこ行くぅ?ゆずか、くまさん見たいー」

また3歳児っぽく言ってみる。


その瞬間、また高遠くんは吹き出してテーブルに突っ伏して肩を震わせた。

いひひ、ざまぁみなさい。

私をからかうのがいけないのよ!



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