その背中、抱きしめて 【上】
「あー可愛かった!ホワイトタイガーもシロクマさんも可愛かった!!赤ちゃん可愛い!!欲しいなぁ。可愛かったなぁ」
モフモフ赤ちゃんの感触を思い出しながら両腕で自分を抱きしめる。
早いもんで、もうアウトゲート手前。
トイレに行ってる高遠くんを待ちながら、もう何度目かのニヤニヤ顔。
「お待たせしました。…先輩、顔、顔。ニヤけすぎ」
見上げれば高遠くんの呆れ顔。
「はい、これ」
目の前に大きなビニール袋。
「??なにこれ」
高遠くんから袋を受け取って中を覗いてみる。
「ああああああああああっっっ!!!」
袋に手を突っ込んで物体を2個取り出す。
出てきたのは、ホワイトタイガーとホッキョクグマの赤ちゃんのぬいぐるみ。
「高遠くん、これっ!!」
もう一度見上げる。
そこには優しい笑顔があった。
「ガラス越しにこいつらがこっち見てたから」
「くれるの?いいの?」
2匹とも?
「どうぞ。俺が持ってたらキモチワルイでしょ?」
「そんなことないよ!美男子は何持っててもサマになるよ!」
よくわからない理屈を力説。
高遠くんは私の力説に呆れ笑い。
「いや、俺はいらないから先輩持っててくださいよ」
「ありがとう…!」
本当に嬉しい。
このぬいぐるみをもらえたのも嬉しいけど、高遠くんが、私の好きなものを私のために買ってくれたその心が嬉しい。