その背中、抱きしめて 【上】
「だから、みんなから”女”として見られちゃうんだよ」
「え…?」
高遠くんの周りの空気が冷たくなったのが分かった。
「この間、言ったでしょ?先輩があいつらからどういう風に見られてるか」
あ…。
高遠くんが私に近づいてくる。
空気が冷たくて、レモンを切る手が動かなくなる。
その瞬間、後ろからふわっと抱きしめられた。
冷たい空気は一瞬にして優しい空気に変わって、高遠くんのにおいに安心した。
「先輩のことは誰にも渡さないから。他の男からどんなに見られても、俺のことだけ見てて」
後ろから首筋にキスを1つ落とされて、今度は息が止まるくらい力強く抱きしめられた。