その背中、抱きしめて 【上】



お弁当を食べ終わって、レモンのタッパーと魔法瓶を持って調理室へ行く。


レモンも結構売れたなぁ。

疲れてる時はこういうのがいいんだよね。



ガラガラガラッ。



製氷皿の冷凍スポーツドリンクをボウルに落とす。



その時、ドアの開く音。

「先輩」

高遠くんだった。



「あれ?高遠くん。どうしたの?」

「またそれタッパーと魔法瓶、体育館に持って行くんでしょ?手伝いに来ました」


そういうところよく気が付くんだよね。


「氷1コ食べてもいいですか?」

「いいよ。どうぞ」


高遠くんはハートの氷をボウルから1つつまんで口の中に放り込んだ。


ボウルから魔法瓶へ色んな形の氷を移していく。

静かな調理室に、ガラガラと冷たい音が鳴り響く。




すぐ近くに気配を感じた瞬間


氷を持った冷たい指先が私の頬に触れて


冷たい唇が私に触れた。



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