その背中、抱きしめて 【上】
コートにいたうちの2人が高遠くんの両肩を担いでベンチに来る。
「ゆず、よろしく」
苦しそうな表情で私に託して、2人はコートに戻っていった。
コートに目をやると、今にも相手にかみつきそうな殺気立った目をした羽柴君がいた。
「羽柴くん!」
名前を呼ぶと羽柴君は我に返ったようで、殺気が消えた目で私を見た。
私は首を横に振る。
ダメ、コートでそんな目をしちゃダメ。
羽柴君は「大丈夫」と言うように、私に手のひらを向けた。
「麻衣ちゃん、ごめんバケツに水いっぱい入れてきてくれる?あと前田くん、悪いけど体育教官室から氷あるだけもらってきて!」