その背中、抱きしめて 【上】
校門まで行くと、タクシーが到着していた。
乗り込んで市立病院まで行ってもらうようお願いした。
あの病院ならここから1番近くて救急外来がある。
「高遠くん大丈夫?なわけないよね、痛むよね。病院まで15分くらいだから頑張って」
すごくすごく心配なのに、どうして言葉にすると薄っぺらくなっちゃうんだろう。
悔しい。
ずっと黙っていた高遠くんが口を開いた。
「やっぱ先輩すごいです」
「何が?」
「俺の足見た瞬間に佐古田と前田に指示して、アイシングと添え木で応急処置してくれて。普通あそこまでできませんよ。佐古田も監督も緒方先生もみんな圧倒されてました」
それはっ…
無我夢中だったから。
「私も中2の終わりにスパイクの後に足の上に乗って足首の靭帯を伸ばしちゃったんだ。その経験が役に立ったかな」
そうだったんだ、って高遠くんが小さく呟いた。
「でもその時の私より高遠くんの方が腫れが酷いから、靭帯切れてないといいんだけど…」
靭帯は完治とリハビリに少し時間がかかる。
神様お願いです。
どうか靭帯断裂していませんように。