その背中、抱きしめて 【上】
でもその脚で電車に乗って家まで帰るの大変だよ。
「嫌だと思うけど、お父さんに送ってもらおうよ。今日は安静にした方がいいよ」
高遠くんを説得して、何とか納得してもらった。
いや、私も緊張するんだけど。
暫くして車が到着した。
助手席からお姉ちゃんが顔を出す。
「よっ。柚香、翔くん」
「お姉ちゃん!」
お父さんが車から降りてきた。
「バレー部1年の高遠翔といいます。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」
「柚香の父です。いつも柚香がお世話になってるそうで。今日は大変だったね。さ、乗って」
高遠くんと2人、後ろの席に乗り込む。
とりあえず第一関門突破かな…。
家の大まかな住所を高遠くんがお父さんに伝えて車は出発した。
「お母さんから聞いたよ。2人は付き合ってるんだって?」
いきなりお父さんが核心を突いてきた。
「う、うん」
お母さんには普通に話せるのに、やっぱりお父さんは緊張する。
「真剣にお付き合いさせて頂いてます。お互い勉強を第一に、部活も疎かにしないようなお付き合いをしています」
お母さんとの約束…高遠くんには話してないのに、最初からそのつもりだったんだ…。