その背中、抱きしめて 【上】




『ダメです。そんなことさせられるわけないじゃないですか』

やっぱりね。


「そう言われるのはわかってたんだけど、心配なんだよ。私も松葉杖使ったことあるけど手が痛くなるし、荷物なんて持てないし。大変な時こそ私を頼ってほしいんだよ。高遠くんはいつも私のこと助けてくれるけど、高遠くんが大変な時に私が何の力にもなれないなんて…片方だけが相手の助けになるなんて付き合ってるって言えないよ!お互い大変な時には助け合わなきゃ付き合ってるって言えないと思うんだ」


一気にまくしたてる。

高遠くんは黙ったまま…。


「高遠くんが助けてくれる時、私すごく嬉しいの。私のためにしてくれること、すごく嬉しいの。高遠くんは私が高遠くんのために何かするの嫌?迷惑?」


高遠くんの沈黙が続く。

…お願い、何か喋って。


『…迷惑なわけないじゃないですか。迷惑なんかじゃないけど、俺のために小さな先輩が一生懸命何かするって男としては複雑なんですよ。先輩のためなら、俺何でもします。男だからそれは当然なんです。けど…』

「男とか女とか関係ないよ!高遠くんは何で私に色々してくれるの?私のこと好きだからでしょ?私だって一緒だよ。高遠くんのこと好きだから、高遠くんの役に立ちたいんだよ。お願い、送り迎えさせて!」


言葉足らずなのはわかってる。

思ってること全部伝えきれてない。

けど、思いは伝わってほしい。



私、高遠くんのこと大切なんだよ。

好きだから、甲斐甲斐しく世話焼きたいんだよ。

心配なんだよ。




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