その背中、抱きしめて 【上】
ガチャ。
門扉が開いて高遠くんが松葉杖姿で出てきた。
「おはようございます」
「あ、おはよう。足どう?」
高遠くんに駆け寄る。
「まだ痛いけど、でも痛み止めは飲んでるから」
「そうだよね。ほんとは部活も休んで安静にしてた方がいいんだけど…。あ、バッグ貸して。私持つから」
両手を差し出した。
「いいです。迎えに来てもらうだけで十分です」
「そんな大きな斜め掛けバッグ、松葉杖で歩けないよ。ていうか、そのために私迎えに来たんだから。ハイ、貸して。早く」
「あ、ちょっと…!」
半ば強引に高遠くんからバッグを奪った。
そして自分のバッグを掛けてる肩と反対の肩に掛ける。
ちょうど胸の前でストラップがクロスするように左右で二つカバンを掛けた。
「こんな時くらい頼ってよ。私そんなに頼りない?役に立たない?」
何をやっても完璧だから弱音を吐くのは嫌いかもしれないけど、それでも頼ってほしい。