その背中、抱きしめて 【上】
「おつかれーい」
長い1日が終わった。
高遠くんにとっても長い1日だったと思う。
試合だと結構あっという間なんだけどね、トレーニングは時間が進むの本当に遅い。
高遠くんとゆっくり歩いて帰る。
8月中旬の夕方はまだまだ日中の熱が残ったまま。
夕方になっても青い空。
遠くには大きな入道雲。
まだまだ暑いけど、時折吹く弱い風が暑さを一瞬忘れさせてくれる。
私はこんな夏の夕方、嫌いじゃない。
高遠くんの家の最寄り駅に降り立つと、青空の大半は雲に隠れていた。
せっかく気持ちいい夏の夕方だったのに。
ついには、高遠くんの家の数百メートル前で、ポツっと雨が落ちてきた。
「雨!?今日降るなんて聞いてないよ。何かあっちの空の雲黒いし、もしや夕立?」
傘持ってないし、高遠くん送り届けたら走って帰った方がいいなぁ。
「ゲリラ豪雨になりそうな真っ黒い雲来てますね」
そして
高遠くんの家の数十メートル前で、バケツをひっくり返したような雨が降ってきた。