その背中、抱きしめて 【上】



「こんなんじゃ帰れないでしょ?」


高遠くんがため息交じりに言う。

コクッ、コクッと私は涙目で首を縦に振った。


雷にビックリして腰が抜けそう…。




「どうぞ、誰もいないけど」


門を開けて高遠くんが先に家の敷地に入る。

開いた門から見えるのは、長い玄関アプローチとその横の芝生の庭。


我が家のちっちゃな庭(と呼べるのかどうか)とはわけがちがう!!


あまりの広さに足が止まる。

「先輩?濡れますよ」

高遠くんの声で我に返り、玄関まで走った。



玄関は高い吹き抜け。

まるでドラマに出てくるお金持ちの豪邸のよう。

しかも男2人で住んでるのにチリ1つないピカピカの家。


(”家政婦は見た”っぽい…)




ピリリリリ。


電話の着信音が広い玄関に鳴り響いた。

バッグからスマホを取り出す。

かけてきたのはお母さん。


「もしもし。うん、大丈夫。今、高遠くんの家に着いたところなんだけど、すごい雨と雷で…うん、そう。それでちょっとの間、高遠くん家で雨宿りさせてもらうことになった。雨止んだらすぐに帰るよ」


高遠くんが人差し指で手まねき(指まねき?)してる。

近寄るとスマホを指さしてる。

(換われってこと?)




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