その背中、抱きしめて 【上】
どうやらそうらしい。
「もしもしお母さん?ちょっと高遠くんに換わる」
スマホを高遠くんに渡す。
「…高遠です。すみません、家まで送ってもらったのに急に雨に降られてしまって。今、雷がかなり近くて雨もすごいので、家に入ってもらいました。ウチから柚香先輩の家までタクシー呼ぼうと思ったんですが、この急な雨でなかなかタクシーが来れない状況らしくて。タクシーが来次第、お帰しします。はい、はい。すみません、ありがとうございます」
今、タクシー呼んでくれてたんだ。
でもそうだよね、この雨じゃみんなタクシー使うから捕まらないよね。
高遠くんからスマホを受け取る。
「あ、私。じゃあまた高遠くん家出る時に連絡するね。うん、じゃあね」
電話を切った。
「あ!!ていうかタクシーって、私あまりお金持ってないよ。ここから駅まで1メーターで行くかなぁ」
「心配しないでください。父親のタクシー券使うから問題ないです。心配せずに先輩の家までタクシーで帰ってください」
え、でもウチまでじゃ結構な金額かかるんじゃ…!
「先輩、制服ずぶ濡れでしょ。脱いでください。乾かさないと風邪ひきます」
脱…脱ぐ!!!???
「いや、さすがに脱ぐのはまずいよ。私たちまだそれは早いって!!!」