その背中、抱きしめて 【上】
その日の練習が終わるまで、ずっと高遠くんの左打ちが頭から離れなかった。
答えは2つに1つ。
やっぱり高遠くんは私が2年前に見た選手じゃなかったのか
それとも右打ちから左打ちに変えてオポジットになったのか。
「ちょっと、男バレすごい1年入ってきたじゃん。しかも入学式のあのイケメン」
部活帰りはいつも女バレのさくらちゃんと羽柴君と一緒。
女バレは隣のコートだから、男バレの様子も丸わかり。
「今日だけで女バレもあのイケメンのファンがわんさかだよ。ゆずから情報取集しろって、練習終わった後もうるさくてさぁ」
「たしかにあいつはケタ違いだよ。むしろ俺らより上だもん。何であんな化けモンがうちの学校に来たんだかさっぱりだ。県内だって全国常連校がいくつもあるのにさ」
「ゆず?…ゆず?どしたの?難しい顔して」
「…あ?ごめんごめん。ぼーっとしてた」
駅でさくらちゃん、羽柴君と別れてからもずーっと私の頭の中は今日の高遠くんのアタックの映像が繰り返されていた。