その背中、抱きしめて 【上】
「あ、大地だ。先輩、ちょっとすいません。もしもし。おー、久しぶり」
お友達かな。
高遠くんが相手を名前で呼ぶのって初めて聞いた。
それに普段の高遠くんよりも明るい感じがする。
学校でも部活でも聞かない声のトーン。
「今?家。は?だめだよ。何でって…そうそう。いや、マジ無理。ダメ。絶対来んなよ。ちょっ…」
何だ何だ??
”来んなよ”って、お友達が家に来るって言ってるのかな。
「あいつ、切りやがった」
「お友達来るの?じゃあ私帰るよ」
きっと小中の頃の友達とかだよね。
こんな早くに部活が終わるとかいつもじゃありえないもん。
来るなら邪魔しない方がいい。
私は部活があれば会えるんだから。
グイッ。
腕を掴まれてまたソファーに座らされる。
「いいよ、帰らなくて」
「でも、お友達来るんじゃ…」
高遠くんは、もう一度”いい”って少し首を横に振った。