その背中、抱きしめて 【上】



「話は聞いてたけど、まさか今日ここにいるとは思わなかった。俺、すごいいいタイミングで電話したね」

清水くんが高遠くんにVサインをする。

高遠くんは反対に、苦虫を置噛み潰したような嫌そうな顔をした。


「”柚香先輩”、ですね」

清水くんが私の方を向いて、名前を確認した。

私のこと、高遠くんから聞いてたのかぁ。



「何でお前が”柚香先輩”って言うんだよ」

高遠くんが噛みつくように答える。

「だって、他に何て言うのさ?俺はお前から”柚香先輩”としか聞いてないのに。まったく独占欲が強いんだから、翔は」


”チッ”と、高遠くんは舌打ちした。


(相手のペースに呑まれてる高遠くん、初めて見た)


「あ、佐藤柚香です。藤宮高校バレー部のマネージャーをしてます」

一応自己紹介しておく。


「翔から聞いてます。むしろ、中2の時からずっと聞いてました」

「大地っ!!」



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