その背中、抱きしめて 【上】
「ゆず、何。ニヤニヤしすぎてキモいんだけど」
今朝は1人で寂しく登校だったけど、学校に着いてからはニヤニヤが止まらない。
さくらちゃんがドン引きしたって全然問題ない。
「何かいいことでもあった?白状しろ!」
さくらちゃんに詰め寄られても、私の顔は緩みっぱなし。
「高遠くんが、今日どっか寄って帰ろうかって。マックかなぁ。それともスタバかなぁ」
「え、ゆず。それだけ…?」
一歩下がるさくらちゃん。
それだけで十分すぎるよー。
「ゆず、アンタ…可愛い!食べちゃいたいくらい可愛い!!」
頭をギュって抱きしめられる。
「何、何!苦しい!さくらちゃん苦しいってばー!」
ジタバタしても、さくらちゃんはなかなか離してくれなかった。
ピロリン。
「あ、高遠くんかも!」
頭の自由がきかないまま机の上のスマホに手を伸ばす。
手探りで机の上を探して、コツンと指にぶつかる感覚。
(あったあった)
画面は高遠くんからLINEを受信したことが表示されていた。
『ギプス取れました。今から学校に向かいます』
わ…わ…
「やったー!」
急に私が大きい声を出したから
「何っ!?」
さくらちゃんだけじゃなくて、クラス中から視線を集めた。