その背中、抱きしめて 【上】
そんなこと!?
…そうだよね…。
高遠くんには″そんなこと″だよね。
私が勝手に高遠くんとの登下校を幸せに思ってるだけだもん…。
「また変なこと考えてるんでしょ」
もう一度髪の毛をくしゃくしゃされる。
「ちょっ…!」
「とりあえず靴履き替えて。歩きながら話そう」
言われるがままに靴を履き替える。
昇降口を出たところで、高遠くんが私の手を握った。
(えっ…?)
まだ学校なのに。
まだ周りにたくさん生徒がいるのに。
案の定、女子生徒の悲鳴のような声が聞こえる。
そりゃそうだよね、今年の新入生…いや、全学年男子でもナンバーワンって言っていいくらいの大人気男子。
それがこんな平々凡々女と手を繋いで歩いてるとか…。