その背中、抱きしめて 【上】
「高遠くん、座ってシューズ脱いで」
何となく″何か″を察知したのか、高遠くんの顔が曇る。
高遠くんの左の足首を両側から親指と中指で掴んだ。
「…っつ」
ほら、まだ痛みが完全に取れてない。
腫れも完全には引いてない。
足首のすぐ上を掴んで軸にして、足首を回す。
可動域が狭い。
「まだ足首硬いでしょ?こんな状態で無理な練習をしてもいい結果にはならないよ。むしろ、怪我前と同じように出来なくてむしゃくしゃするようになっちゃうし、自分を責めるようになるから…捻挫経験をしてるマネージャーとして、練習はさせられません」
言い切る。
あなたには完全復活してもらいたいの。
左足をかばったりすることであの綺麗なフォームが、崩れるようなことになって欲しくないの。
決して嫌がらせで言ってるんじゃないこと、信じて欲しい。