その背中、抱きしめて 【上】
「でも先輩、俺はっ…」
「わかってる。わかってるよ。わかりすぎて私だって心が痛いよ。高遠くんがエースの責任として1日でも早くコートに戻りたいのはわかる」
高遠くん、聞いて。
私が伝えたいこと。
「でも、でもね。まだ痛みも腫れも引かない状態で左足をかばってプレーしても、フォームが崩れるだけだよ。悪いフォームからいいプレーは生まれない。私はスパイクする時のあの綺麗なフォームに憧れたの。あのフォームをこれからも見たいんだよ」
とにかくまくし立てた。
高遠くんにわかってもらいたくて。
高遠くんが心配なんだよ。
「先輩…痛みと腫れが引いたら、かなりハイペースになると思うけど練習付き合ってくれますか?」
「当たり前じゃん!朝練でも昼練でも居残り練習でも、何でも付き合うよ。何でも手伝うよ」
高遠くんは少し悲しそうな悔しそうな顔をして
「ありがとう」
って言ってくれた。
私こそありがとう。
私の思いをわかってくれて。
″その時″には、全力で協力するからね。