その背中、抱きしめて 【上】



部活中、高遠くんはほとんど体育館にいなかった。

学校の外周をリハビリのために歩いてるらしい。

きっと私と顔を合わせたくなくてそうしたんだろうけど、私も少しホッとした。


部活帰り、校門を出たところで羽柴くんに声を掛けられた。

「たまにはさくらじゃなくて俺と話ししねぇ?」

底抜けに明るい笑顔が夕日に映えた。



「大丈夫か?あんなに目ぇ腫らせて。何あったの?」

学校の近くの大きな公園。

自販機でジュースを買った羽柴くんが私に向かって缶を投げた。

「…っと。ありがと」

ジュースをキャッチする。

2人並んでベンチに座った。


「高遠と何かあったんだろ?今日部活中、一言も喋ってなかったもんな」

さくらちゃんにも羽柴くんにも心配かけて…私何やってるんだろ。

「さくらにも気を遣って話さなかったんだろ?でも話せば少し楽になるかもしんないから、俺に話せよ。お父さん心配だから」

″お父さん″

羽柴くんは本当にいつもお父さんみたいに私のことを見守ってくれてるんだよね。

しっかりしなくちゃいけないのに、こんなんでごめんね。。。



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