その背中、抱きしめて 【上】
「高遠くんから何も聞いてない?」
「うん、あいつ昔から大事なこと何も喋らないから」
大切な友達にも大事なこと話さないって、どんだけ秘密主義なんだろう。
きっと色々心配してくれてるのに…。
でも高遠くんらしいかな。
「高遠くんが清水くんに何も話してないなら、私も何も話せない…ごめんね」
高遠くんが親友に話してないことを、会うの2回目の私が話すわけにいかないよ。
「柚香先輩、翔と付き合ってるのしんどくない?」
え?
「あいつ、すっごいプライド高いし…特にバレーに関しては誰も入り込めないくらいのとこあって。しかもあんまり感情を表に出さないし、付き合ってても″幸せ″って感じられるタイプじゃないと思うんだけど…」
確かに清水くんの言う通りだけど、2人きりの時はけっこう″好き″って態度に出してくれてたから幸せだったよ。
「ううん、幸せだったよ。私のこと大切にしてくれてたと思う」
清水くんは私の目を見たまま、少しの間何も話さなくて…。
「もう2人の関係は過去形なの?」
「え…?」