その背中、抱きしめて 【上】
「『幸せだった』とか『大切にしてくれてた』とか、もう過去形なの?まさか別れたとかじゃないよね?」
清水くんの声色が変わる。
詰め寄ってくるかのような口調。
「…私もわかんないの。もう1ヶ月も喋ってないし、目も合わせてないし。もしかしたら高遠くんの中ではもう終わっちゃってるのかもしれない」
知らない間に自然消滅しちゃったのかな…。
終わりになるなら、もうちょっと話してから別れたかったな。
「だったら俺にしない?」
はい?
「何言ってんの、もう」
初めて会った時も言ってた。
すきがそうやっておちゃらけて人のことからかうんだから…。
「本気なのになぁ。あ、そだ。柚香先輩、LINEのID教えて」
お互いのIDを交換した。
「じゃ、またね。LINEするね」
そう手を振る清水くんと、駅で別れた。