その背中、抱きしめて 【上】



反射的に目を逸らしてしまう。

だって、どんな顔してあったらいいかわからない。

下を向いて前を通り過ぎて、下駄箱の靴に手をかけた。



「ごめん」



声のした方へ向いても下駄箱が影になって誰も見えない。

でも、高遠くんの声に間違いない。


何がごめんなの?

2学期、勉強教えてくれなかったこと?

それとも別れたこと?

(そんなわけないか…)


「謝ったところで許してもらえるわけないけど…俺がこんなこと言える立場でもないけど…」


心臓がうるさい。

高遠くんが何を言いたいのかわからない。





「先輩とやり直したい」





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