その背中、抱きしめて 【上】
『彼女でいてください』
「…はい」
高遠くんの背中をぎゅっと抱きしめた。
「先輩、春高ほんとにごめん」
「え?春高?」
1回戦負けしたこと?
でも高遠くん出てないからしょうがないのに。
「俺、絶対春高予選に間に合わせたかったんだ。先輩に言われた通り自分でもまだ練習始めるの早いと思ってたけど、じゃないと間に合わなかったから。だから焦ってていっぱいいっぱいで冷たい態度とってた」
「だったら…」
口を開いた途端、唇に人差し指を当てられて″聞いて″と制された。
「先輩を春高に連れて行きたかった。これが先輩にとって最後のチャンスだから。なのにメンバーにも選ばれなくて…ほんとにごめん」
(そんなこと考えてくれてたの…?)
「インターハイは絶対決勝まで連れて行く。それで真っ先に先輩の首に優勝メダルかけるよ」
涙腺が崩壊して涙で顔がぐしゃぐしゃの私は、高遠くんの胸に顔を埋めるしかなかった。