その背中、抱きしめて 【上】
腕をいっぱいいっぱいまで伸ばしてスマホを構える。
でも…
「イルミネーションが入らなーーーい」
2人の顔で画面いっぱいになっちゃって、背景がほとんど入らない。
高遠くんが下向いて笑いをこらえてる。
「笑いごとじゃないよ!私いたって真面目だよ!」
私が怒れば怒るほど高遠くんはどんどんツボにはまって…
「ちょ、もう無理。これ以上笑わせないで」
といってしばらく肩を震わせた。
「あー腹痛ぇ…。先輩リーチ短いから俺が撮る」
リーチが短い = 手が短い
「失礼なっ!」
普通です、普通!
高遠くんが手長いだけだし。
高遠くんの腕をまじまじと見る。
(背のわりに手も脚も長いんだよっ)
「比べてみる?」
そう言って左手を前に伸ばす。
私も右肩を高遠くんの左肩にくっつけて右手を伸ばした。
「肘と手首のど真ん中」
そう言って、また高遠くんは肩を震わせて声なく笑った。
「私は標準だから!高遠くんが手長いだけだから!」
今度は高遠くんがスマホを構えた。
(すごーい。背景キレイに入る!)
周りがイルミネーションで明るいからか、実物より良く写ってご満悦の私。
園内をゆっくり見て回って帰ることにした。