その背中、抱きしめて 【上】
「先輩、俺にも嵌めて?」
優しく促されて、私のより一回り大きい銀色に光るリングを高遠くんの右手の薬指に嵌める。
緊張で指が震えた。
「これからまた、いっぱい笑っていっぱい喧嘩もしよう。一緒に大人になっていこう」
高遠くんの右手を少し引っ張って、今度は私から唇を重ねた。
「…って、あれ?私の方が年上なんだから一緒に大人になるんじゃなくて、先に成長しとかないとダメだよね」
ふと気づいたことを口にすると、高遠くんは″ぶはっ″と吹き出して
「せっかくカッコいいこと言ったんだから、気づいても声に出さないでよ」
とお腹を抱えて静かに笑った。
(なんか短時間にこんなに笑った高遠くん見たの初めてかも…)
たったそんなことすら嬉しいクリスマスイブ。