その背中、抱きしめて 【上】



「もし良かったら、なんだけどね。お母さんが明日家族でクリスマスパーティーするから、高遠くんもどうかなって言ってて。全然無理にじゃないんだよ。むしろ私はきっと来ないよって言ったんだけど、聞くだけ聞けって粘るから。断ってくれていいからね」

ほんの数秒の間のあと、電話口から聞こえてきた高遠くんの言葉は。


『先輩ん家が迷惑じゃないなら、行くよ』


我が耳を疑う。

そんな馬鹿な。

絶対断ると思ってたのに。


「え、ほんとに?大丈夫?無理してるなら断って全然いいんだよ?」

『無理してないよ。それとも先輩、俺に来てほしくないですか?だったら行かないけど』

高遠くんのテンション…というか機嫌が明らかに。。。


「ち、違う、違うの。高遠くん皆でワイワイとかあんまり好きじゃないんじゃないかと思って。それに明後日も部活あるし」

『まぁあんまりテンション高いノリは苦手だけど、家族のパーティーなんだからクラス会とかの悪ふざけとは違うでしょ?それに、怪我した時に先輩のお父さんに家まで送ってもらったお礼もちゃんとしてないから直接挨拶したいし』


う…高遠くんが大人すぎる。

何か申し訳なさ過ぎてどうしよう…。


「ありがとう、お母さん喜ぶよ。じゃあ明日部活終わったらそのままウチまで一緒に帰ろ。制服汚れたりシワ着くかもしれないから、私服持ってきた方がいいかも」

『わかった。じゃ、また明日』

「うん、ほんとありがとうね。また明日ね」


うわーーーーーーー…。

明日、うちのクリスマスパーティー(ってほどじゃないんだろうけど)に高遠くんが来るんだーーー。


ド緊張。



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