その背中、抱きしめて 【上】
リビングに行くと、お母さんがご馳走をテーブルに並べてる。
「お邪魔します。お誘い頂いてありがとうございます」
高遠くんがお母さんに向かって頭を下げた。
「いらっしゃい。急な話でごめんなさいね。お家は大丈夫?」
「はい、どうせ父親帰ってこないと思うんで。あ、これ皆さんでどうぞ」
高遠くんがカバンから箱を取り出してお母さんに差し出す。
「あらあら、そんなのいいのに…。お金使わせちゃってごめんね。そんなつもりで呼んだんじゃないから、空身で来てくれていいのよ」
やっぱり高遠くんは年のわりにすごくしっかりしてる。
私なんてのほほんと生きててホントに申し訳なくなってくるよ。
「自分の家だと思って楽にしててね。もうご飯の準備できるから」
お母さんが何だか楽しそう。
うちはお姉ちゃんと私の女2人だから、息子が出来たみたいで嬉しいのかなぁ。
「あ、そうだ。高遠くん私服持ってきた?」
「持ってきた」
じゃあ着替えてもらっちゃおう。
「…あれ?お姉ちゃん、着替えてもらうの私の部屋でいいのかな…」
こそっと耳打ちで聞いてみる。
「は?他にどこがあるの?部屋まで案内して柚香は廊下で待ってたらいいじゃん。てか部屋大丈夫?汚くないの?」
「汚くないよっ」
お姉ちゃんに小声で反論して高遠くんの方を向く。
「高遠くん、私の部屋で着替えて」
高遠くんを連れて階段を上がる。