その背中、抱きしめて 【上】



え…?


「9月に足の怪我をして、早くレギュラーに復帰しなきゃいけないと焦ってました。柚香先輩は自分が捻挫した経験があるからゆっくり完全に治さなきゃだめだと毎日気を遣ってくれてたのに、そのアドバイスも聞かずにただ焦りばかりが募って…厚意を拒否して先輩から距離を置きました」


下を向いたまま高遠くんが淡々と話す。


人一倍感情は表に出ないけど、人一倍責任感が強くて人の何倍も努力する人。

知ってたよ、焦ってたこと。

早くコートに立ちたくて、立たなきゃいけないって自分を追い込んでいたことも。

そのために私から離れていったことも。



でも…

辛かった。

悲しかった。

寂しかった。

切なかった。


高遠くんの苦しい時に一緒に頑張らせてくれなかったこと。

それが1番辛かったよ。




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