その背中、抱きしめて 【上】
「先輩には何も言わずに自分勝手に離れました。あの頃の自分には本当に余裕がなくて、ただレギュラーを取ることだけで頭がいっぱいでした。本当に先輩には申し訳なかったと思ってます。先輩のお父さんとお母さんにもお会いした時に、真剣に付き合ってると言ったことは嘘じゃありません。でも自分があまりにも未熟で、結果先輩を傷つけることになりました。大切な娘さんを傷つけてしまって、本当にすみませんでした」
そう言って高遠くんはお父さんとお母さんに頭を下げた。
何秒間も。
「それから先輩、本当にごめんなさい」
隣に座る私にも頭を下げた。
「まだガキですけど…ガキの分際でおこがましいのもわかってますけど…でももう先輩を傷つけません。悲しませません。離れてる時も心は先輩に寄り添って不安にはさせません。その決意表明として、いつも心は一緒にいるという意味を込めて2人同じデザインの指輪をプレゼントしました」
今度はお父さんとお母さんの目を見て。
まっすぐに、高遠くんはそう言った。
そんなこと考えてこの指輪をくれたなんて…。
嬉しすぎて、感動して、涙が込み上げてくる。
涙が落ちないように…少し上を向いた。