その背中、抱きしめて 【上】
「これとこれと…あと果物買って帰ろう」
今日はとうとうバレンタインの前日。
スーパーで買い出しをして、さくらちゃん家に行く。
「フルーツロールケーキ作るからね。ふわっふわの。ゆず、愛情込めて作るんだよ」
さくらちゃんの会心の笑顔。
ほんとにさくらちゃんはいっつも笑顔で優しくて頼りがいがあって、男女分け隔てなく仲良くするし、美人だし背も高いし自慢の友達だよ。
私なんて結構なネガティブだから見習わなくちゃなぁ。
さくらちゃんに教わるまま、慣れない手つきで、でも一生懸命ケーキを作った。
「できたーーーーー」
フルーツいっぱいのロールケーキ。
食べやすいようにカットして、クリーム部分にセロハンを貼ってから透明の袋に1片ずつ入れる。
そして、最後に袋の口をリボンで結んだ。
「高遠くん食べてくれるかなぁ」
「食べるに決まってるじゃん。ゆずが作ったんだから。高遠くん喜ぶよ」
喜んでくれるといいな。
明日、いつ渡そう…。
朝?それとも部活の後?
「さくらちゃん、羽柴くんにいつ渡す?」
「お昼かな。お弁当の後に食べれるじゃん?」
お昼かぁ…高遠くんにそれは無理だから、朝に渡そうかな。
「明日のお昼、高遠くんと食べたら?そしたらそこで渡せるじゃん」
「今まで1回も一緒にお昼食べたことないのに、いきなり誘うの?ハードル高いよ」
それに、高遠くんお弁当なのか学食なのかパンなのかさっぱりわかんないし。
「だから今日のうちに”明日一緒にお昼食べよう”って誘っとくんだよ。彼女なんだからそのくらいしたって全然OK!ゆずは高遠くんに対して遠慮しすぎ。そんなんじゃゆずも疲れちゃうし、高遠くんだって本当にゆずは自分のこと好きなのか不安になっちゃうよ?ちゃんと自分の気持ちはその場その場で伝えなきゃ」