その背中、抱きしめて 【上】
「じゃあゆず頑張って!」
さくらちゃんと羽柴くんに見送られて食堂へ急ぐ。
(緊張するー…)
食堂へ続く廊下で肩に手を置かれた。
びっくりして振り返った視線の先には学ランの第2ボタン。
この目線の高さ、知ってる。
顔を上げればあの愛しい顔がある。
「高遠くん」
「まだ緊張してんの?」
高遠くんが小さく笑う。
その顔にドキッとして目を逸らした。
「だって、初めてだから」
食券を買って定食を受け取る。
高遠くんと向かい合って席に着いた。
「いただきます」
胸の前で手を合わせて少しおじぎする。
高遠くんが頬杖をついてまた少し笑った。
「先輩のそういうとこ好き」
「え?」
今日1番の胸の音。
ドキンと大きく鳴った。